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閉店と居抜き

飲食店の事業譲渡の手続きと
契約書で決めること

最終更新:2026年9月28日

飲食店の事業譲渡の手続きと 契約書で決めること閉店と居抜き飲食店の事業譲渡とは?売却の手続きと契約書・引き継がない厨房機器の扱い

飲食店の事業譲渡とは、店の設備だけでなく、従業員・取引先・屋号・営業許可など、営業に必要なものをまとめて第三者へ引き継ぐ取引です。個人経営の店には株式がないため、店を営業ごと手放すなら事業譲渡、設備だけを手放すなら造作譲渡を選ぶことになります。

事業譲渡では、貸主・従業員・取引先の承諾を1件ずつ取り、契約書で譲る物と譲らない物を分けます。食品の営業許可は、2023年12月13日から、営業の全部を譲る場合に届出で引き継げるようになりました。この記事では、手続きの流れ、契約書で決めること、印紙税と消費税、引き継がない厨房機器の扱いを、条文と国税庁・保健所の資料で整理します(2026年9月28日確認)。

目次
  1. 飲食店の事業譲渡と造作譲渡・株式譲渡の違い
  2. 飲食店の事業譲渡の手続きの流れ
  3. 飲食店の事業譲渡で承諾が要る相手
  4. 飲食店の事業譲渡と営業許可の承継
  5. 飲食店の事業譲渡契約書で決めること
  6. 飲食店の事業譲渡の印紙税と消費税
  7. 飲食店の事業譲渡で残る厨房機器の扱い
  8. 飲食店の事業譲渡を選ばないほうがよい場合
  9. 飲食店の事業譲渡に関するよくある質問

飲食店の事業譲渡と造作譲渡・株式譲渡の違い

飲食店の事業譲渡は営業そのものを譲る取引で、造作譲渡は内装や設備だけを譲り、株式譲渡は会社の持ち主が替わるだけで店の契約は会社に残ります。どれを選ぶかで、承諾を取る相手と保健所の手続きが変わります。

事業譲渡とは、ひとまとまりの営業を、設備・従業員・取引先・屋号・ノウハウごと第三者へ譲ることです。飲食店では、閉店の代わりに店を続けてくれる人へ引き継ぐ方法として使われます。

飲食店の事業譲渡と造作譲渡・株式譲渡の違い
比べる点事業譲渡造作譲渡株式譲渡
譲るもの設備・従業員・取引先・屋号など営業の全部または一部内装・設備・厨房機器などの造作会社の株式
選べる店個人経営・法人とも個人経営・法人とも株式会社が営む店
店舗の賃貸借賃借権を譲るには貸主の承諾が要る次の借主が貸主と契約を結ぶのが通常借主は会社のまま。株主の変更に関する条項は確認する
従業員本人の同意を得た人だけが移る引き継がない会社との雇用がそのまま続く
食品の営業許可営業の全部を譲るなら、譲受人の承継届で引き継げる営業の譲渡に当たるかを保健所に確認する許可を受けた会社は変わらない。代表者が替わるなら届出を確認する

個人経営の店は株式譲渡を選べません。店をそのまま続けてもらいたいなら事業譲渡、内装と設備だけを次の借主に使ってもらうなら造作譲渡です。造作譲渡の仕組みは造作譲渡とは、居抜きで売る側の段取りは居抜き売却の進め方にまとめています。

古い解説には「事業譲渡では営業許可を取り直す」と書かれたものがあります。食品の営業許可は、2023年12月13日以降に営業の全部を譲った場合、譲受人が届出をすれば引き継げます。この点は後の章で詳しく扱います。

飲食店の事業譲渡の手続きの流れ

飲食店の事業譲渡は、譲る範囲の整理、相手探しと条件交渉、貸主・従業員・取引先の承諾、契約の締結、引渡し、保健所などへの届出の順に進めます。承諾が取れるかどうかを、相手探しの早い段階で確かめるのが要点です。

飲食店の事業譲渡の手続きの流れ
段階やること用意する書類
1 譲る範囲を決める設備・従業員・取引先・屋号のうち何を譲るか。引き継がない機器はどれか固定資産台帳、機器リスト、リース契約書
2 相手を探す同業の知人、事業承継の仲介やマッチングの窓口、居抜きを扱う不動産会社に相談する秘密保持の取り決め、店の概要
3 条件を交渉する譲渡価額、引渡日、従業員の処遇、競業の制限基本合意書
4 承諾を取る貸主・従業員・取引先・リース会社に1件ずつ承諾書、同意書
5 契約を結ぶ事業譲渡契約書に署名する。株式会社は株主総会の承認が要る場合がある事業譲渡契約書、株主総会議事録
6 引き渡す鍵・設備・帳簿などを引き渡し、代金を受け取る引渡しの確認書
7 届出をする譲受人は保健所へ承継届。譲渡人は税務署などへ廃業の届出契約書の写し、営業許可書

株式会社が事業の全部を譲るときは、効力が生じる日の前日までに、株主総会の決議で契約の承認を受けます(会社法467条1項1号)。事業の重要な一部を譲る場合も同じで、譲る資産の帳簿価額が総資産額の5分の1(定款で下げた場合はその割合)を超えないときは除かれます(同項2号)。

この決議は特別決議で、原則として議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要ります(会社法309条2項11号)。個人経営の店には株主総会がないため、この手続きはありません。

相手探しの段階では、従業員や取引先に話が漏れると、店の営業に響きます。条件が固まるまでは伝える範囲を絞り、承諾を取る段階で1人ずつ説明します。

参照:e-Gov法令検索「会社法」第309条・第467条(2026年9月28日確認)

飲食店の事業譲渡で承諾が要る相手

事業譲渡では、店の契約や雇用は自動では移りません。店舗の賃貸借は貸主、雇用は従業員本人、仕入れやリースなどの契約はその相手方の承諾が要り、1件ずつ取り付けます。

飲食店の事業譲渡で承諾が要る相手
引き継ぐもの承諾する人根拠承諾が取れないとき
店舗の賃借権貸主民法612条店舗を引き継げない。無断で譲ると契約を解除される理由になる
従業員の雇用従業員本人民法625条1項その人の雇用は移らず、譲渡人のもとに残る
仕入れ・保守などの契約契約の相手方民法539条の2譲受人が相手方と新たに契約を結ぶ
リースの機器リース会社リース契約の条項譲渡の対象から外し、返却の段取りを組む

民法612条は、借主が貸主の承諾を得ずに賃借権を譲ることを禁じ、違反して第三者に使わせた場合は貸主が契約を解除できると定めています。貸主の承諾は、後で争いにならないよう書面でもらっておきます。

従業員については、民法625条1項が「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない」と定めています。譲受人のもとで働くかどうかは本人が決めるため、労働条件を示したうえで同意を取ります。

預けている保証金の扱いも、事業譲渡の契約で決めておきます。賃借権を適法に譲ったときは、保証金の残りを返す場面として民法622条の2に定めがあります。詳しくはテナントの保証金は返ってくるかで解説しています。リースで入れた機器は所有権がリース会社にあるため、厨房機器のリースと購入の比較で扱いを確かめてください。

参照:e-Gov法令検索「民法」第539条の2・第612条・第622条の2・第625条(2026年9月28日確認)

飲食店の事業譲渡と営業許可の承継

飲食店の営業許可は、2023年12月13日以降に営業の全部を譲った場合、譲受人が保健所へ地位の承継届を出すことで引き継げます。営業の一部だけを譲る場合はこの仕組みの対象外です。

東京都保健医療局は、改正前は譲渡人が廃業届を出し、譲受人があらかじめ新規の営業許可を申請する必要があったと説明しています。改正後は、譲受人が新たに申請や届出をしなくても、承継届で営業者を変更できます。

飲食店の事業譲渡と営業許可の承継
項目内容出所
対象2023年12月13日以降に、食品衛生法の許可または届出に関する営業の全部を譲渡した場合東京都保健医療局
届け出る人営業を譲り受けた人(譲受人)食品衛生法56条
期限遅滞なく食品衛生法56条2項
添える書面譲渡の事実と意思が確認できる譲渡契約書や覚書東京都保健医療局
契約書に要る記載譲渡人と譲受人の氏名・住所、営業施設の名称・所在地、営業許可の種類、事業譲渡の旨、譲渡年月日八王子市
ほかの持ち物営業許可書、食品衛生責任者の資格を証明するもの、窓口の本人確認書類八王子市

営業届出の施設も、食品衛生法57条2項で同じ仕組みが準用されます。東京都は、譲渡人が事前に保健所へ相談するよう案内しています。八王子市は、譲渡後に事業の内容や設備の変更が確認された場合は変更届や新規の許可が必要になることがあり、6か月以内に保健所の職員が営業所へ確認に来ると案内しています。個人事業主が法人成りをした場合も、契約書などの書面が要るとしています。

必要な書類や確認の方法は保健所ごとに違うため、店の所在地を管轄する保健所の案内に従ってください。廃業届と承継届の違いは保健所の廃業届の出し方で比べています。

参照:e-Gov法令検索「食品衛生法」第56条・第57条/東京都保健医療局「事業譲渡による営業許可・届出の地位の承継が可能になりました」/八王子市「営業許可の事業譲渡について」(いずれも2026年9月28日確認)

飲食店の事業譲渡契約書で決めること

飲食店の事業譲渡契約書では、譲る資産の目録、譲渡価額と支払い、引渡日、従業員と契約の引き継ぎ、債務の扱い、競業の制限を決めます。目録に書いていない物は譲る対象から漏れるため、厨房機器は1台ずつ書き出します。

飲食店の事業譲渡契約書で決めること
条項決めること飲食店で揉めやすい点
譲る資産の目録設備・備品・在庫・屋号・レシピ・電話番号など厨房機器は型式と台数まで書く。リースの機器と貸主の設備を入れない
譲渡価額と支払い金額、支払日、分割の有無在庫の食材や酒類を別に精算するか
引渡日鍵・設備・帳簿を渡す日承継届と賃貸借の切り替え日をそろえる
従業員引き継ぐ人と労働条件同意を取れた人だけを書く
契約の引き継ぎ賃貸借・仕入れ・保守の各契約相手方が承諾しなかったときの扱い
債務の扱い買掛金や未払金を誰が払うか商号を続けて使うと譲受人も責任を負う
競業の制限譲渡人が同じ営業をしない範囲と期間定めがないと同一と隣接の市町村で20年
不具合の扱い引渡し後に見つかった不具合の責任中古の厨房機器を現状のまま渡すか

競業の制限は、契約で決めなかった場合にも法律の定めが働きます。会社法21条は、事業を譲った会社は、別段の意思表示がない限り、同じ市町村と隣接する市町村で、譲った日から20年間は同じ事業ができないと定めています。特約で制限を付けても、有効なのは30年以内です。

個人の店は、商法16条に同じ内容の定めがあります。譲った後に近くで店を開く予定があるなら、範囲と期間を契約書に書いておきます。

債務は、譲受人が譲渡人の商号を続けて使うと、譲受人も譲渡人の事業で生じた債務を払う責任を負います(会社法22条1項、個人は商法17条1項)。譲受人が責任を負わない旨を遅滞なく登記した場合や、譲渡人と譲受人がそろって通知した相手に対しては適用されません。

内装と設備だけを譲る造作譲渡の契約では、決める項目がもっと少なくなります。違いは造作譲渡の契約書で決めておく項目と見比べてください。

参照:e-Gov法令検索「会社法」第21条・第22条/e-Gov法令検索「商法」第16条・第17条(いずれも2026年9月28日確認)

飲食店の事業譲渡の印紙税と消費税

事業譲渡契約書は、印紙税の第1号文書「営業の譲渡に関する契約書」にあたり、記載した契約金額で税額が決まります。消費税は、譲る資産のうち設備や営業権が課税、土地は非課税として分けて計算します。

飲食店の事業譲渡の印紙税と消費税
記載された契約金額印紙税額
1万円以上10万円以下200円
10万円を超え50万円以下400円
50万円を超え100万円以下1千円
100万円を超え500万円以下2千円
500万円を超え1千万円以下1万円
1千万円を超え5千万円以下2万円
5千万円を超え1億円以下6万円
契約金額の記載のないもの200円

国税庁の一覧表(令和8年4月1日現在法令等)では、1億円を超える契約は金額に応じて10万円から60万円です。一覧表にある税率の軽減は不動産の譲渡に関する契約書が対象で、営業の譲渡の契約書は含まれていません。

消費税について、国税庁の質疑応答事例は、営業の譲渡は課税資産と非課税資産を一括して譲るものなので、対価を合理的に分けて課税するとしています。事例では、営業権と有形固定資産の対価が課税対象で、土地の対価は非課税です。

テナントで営業している店が土地を譲ることはないため、厨房機器などの設備や営業権の対価が課税の対象になります。所得税や法人税の扱いは譲る資産の帳簿価額で変わるため、厨房機器の減価償却と売却時の仕訳を確かめたうえで、顧問の税理士に相談してください。

参照:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)」/国税庁「営業の譲渡をした場合の対価の額」(いずれも2026年9月28日確認)

飲食店の事業譲渡で残る厨房機器の扱い

事業譲渡で相手が引き継がない厨房機器は、契約の前に目録から外し、買取・返却・処分の行き先を決めておきます。リースの機器は所有権がリース会社にあるため、譲ることも売ることもできません。

相手が店をそのまま続ける場合でも、すべての機器を引き継ぐとは限りません。メニューを変えれば使わない機器が出ますし、古い冷蔵庫や製氷機は新品に替えたいという相手もいます。

飲食店の事業譲渡で残る厨房機器の扱い
機器の状態行き先確かめること
譲受人が使う目録に載せて譲る型式・製造年・動作の状態
譲受人が使わない買取に出す引渡日より前に搬出できるか
リースで入れたリース会社へ返却するリース契約書と所有権の標識
値がつかない冷機フロン類を回収して処分する引取証明書の保存

引き継がない機器を店に残したまま引き渡すと、後で撤去の費用と手間をどちらが負うかで揉めます。目録から外す機器は、契約書にも「譲渡の対象外」として書き、搬出の期限を決めておきます。

事業譲渡の交渉と並行して買取査定を取っておくと、引き継がない機器の売却額が分かるうえ、目録に載せる機器の価額を考える材料にもなります。機器ごとに値がつく条件は厨房機器の買取相場の決まり方で確認できます。

値がつかない冷蔵庫や製氷機は、廃棄のときにフロン類の回収が要ります。手続きは業務用冷蔵庫の処分方法と行程管理票の書き方で解説しています。閉店案件に対応する業者の対応品目と出張エリアは厨房機器買取の比較表で比べられます。

飲食店の事業譲渡を選ばないほうがよい場合

貸主が賃借権の譲渡を認めない、退去日が近いのに相手が決まらない、相手が設備だけを欲しがっている。こうした場合は、事業譲渡にこだわらず、造作譲渡や閉店と機器の売却に切り替えたほうが損を抑えられます。

飲食店の事業譲渡を選ばないほうがよい場合
状況事業譲渡の障害切り替え先
貸主が承諾しない店舗を引き継げない原状回復して退去し、機器を売却する
相手が内装と設備だけ欲しい従業員や取引先を引き継ぐ意味がない造作譲渡
退去日までに相手が決まらない待つ間も賃料がかかる締め切りを決めて閉店と機器の買取へ
借入れや未払いが多い相手が債務の引き継ぎを避ける税理士や弁護士に相談する

事業譲渡は、相手が見つかり条件がまとまって初めて成立します。待っている間も賃料は発生するため、「この日までに決まらなければ閉店に切り替える」という締め切りを先に決めておきます。

閉店に切り替えたときの段取りは飲食店の閉店でやること、費用の内訳は飲食店の閉店費用、機器の売り方は飲食店の閉店買取で確認できます。

飲食店の事業譲渡に関するよくある質問

個人経営の飲食店でも事業譲渡はできますか?

できます。個人事業には株式がないため、店を営業ごと譲るなら事業譲渡になります。株主総会の承認は要りませんが、貸主・従業員・取引先の承諾と、譲受人による保健所への承継届は必要です。

事業譲渡すると営業許可はそのまま使えますか?

2023年12月13日以降に営業の全部を譲った場合は、譲受人が保健所へ地位の承継届を遅滞なく出すことで引き継げます(食品衛生法56条)。営業の一部だけの譲渡は対象外です。譲る前に管轄の保健所へ相談してください。

事業譲渡契約書に印紙は要りますか?

要ります。国税庁の印紙税額の一覧表では、営業の譲渡に関する契約書は第1号文書にあたり、記載した契約金額に応じて200円から60万円、金額の記載がなければ200円です(令和8年4月1日現在法令等)。

事業譲渡した後に近くで店を開けますか?

契約で別に決めていなければ、会社法21条(個人の店は商法16条)により、同じ市町村と隣接する市町村で20年間は同じ事業ができません。範囲や期間は契約で変えられるため、予定があれば契約書に書いておきます。

譲受人が引き継がない厨房機器はどうすればいいですか?

譲渡の目録から外し、引渡日より前に買取や処分の段取りを付けます。リースの機器は売れないため、リース会社に返却します。値がつくかどうかは、事業譲渡の交渉と並行して買取査定を取ると早く分かります。

この記事を書いた人

執筆・編集:厨房機器買取ナビ 編集部

飲食店の閉店・入れ替えで業務用の厨房機器を売るときの買取業者を、対応エリア・買取方法・得意な品目で比較しています。掲載している業者の情報は各社の公表情報、フロン排出抑制法など制度の内容は省庁の公表資料をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。

最終更新:2026年9月4日