厨房機器のリースは、開業時の初期費用を抑えられる代わりに、契約期間中は原則として解約できません。中途解約する場合は未経過期間のリース料のおおむね全部、原則として90パーセント以上を支払う——これが法人税法上のリース取引の要件です。
もう一つ、閉店するときに効いてくるのが所有権です。リース物件の所有権はリース会社にあり、店を畳むときに売って現金化することはできません。購入した機器なら買取に出せる場面で、リース機器には残リース料の支払いと返還だけが残ります。
この記事では、リースと購入の分かれ目、契約で縛られる条件、税務上の扱い、そして閉店時に何が起きるかを、公的な資料の記載にもとづいて整理します。
目次
リースと購入の分かれ目は3つ
厨房機器のリースとは、リース会社が機器を購入し、それを一定期間借りて使う仕組みです。判断が分かれるのは初期費用・所有権・出口の3点で、この3つを並べると自店にどちらが合うかが見えます。
| 比べる点 | リース | 購入(新品・中古) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 物件価格の一括支払いが不要。月額で使い始められる | 取得時にまとまった資金が要る |
| 所有権 | リース会社にある。使用者に当然に移転することはない | 自店にある |
| 途中でやめる | 原則できない。解約時は残リース料相当の違約金 | いつでも売却・処分の判断ができる |
| 閉店時の出口 | 返還。売却収入にはならない | 買取に出せば収入になる |
| 修繕・保守 | 使用者が修繕義務を負う | 自店の判断と負担で行う |
公益社団法人リース事業協会は、リース物件の所有権はリース会社にあり、リース期間が終了した後は返還するか再リースするかになると説明しています。使用者へ所有権が当然に移ることはありません。
開業の資金繰りだけを見ればリースは有利に働きます。一方で「やめるとき」の自由度は購入のほうが高い——この非対称性が、リースを選ぶかどうかの実質的な分かれ目です。
参照:公益社団法人リース事業協会「リース契約の特徴」(2026年9月7日確認)
リース契約で縛られる3つの条件
リース契約には、購入にはない拘束が3つあります。いずれも契約書の条項として定型化されており、交渉で外せる性格のものではありません。契約前に把握しておく価値がもっとも高い部分です。
| 条件 | 契約上の定め | 実務で起きること |
|---|---|---|
| 中途解約の禁止 | リース期間中の解約はできず、解約する場合は残リース料または残リース料相当額の違約金を支払う | 早期の閉店・業態変更でも支払いは続く |
| 修繕義務は使用者 | 使用者が物件の修繕義務を負い、サプライヤーと保守契約を結ぶ | 故障時の修理費は自店の負担になる |
| 危険負担 | 物件が滅失・損傷しても、使用者はリース料の支払いを拒めず損害賠償等も請求できない | 火災・水漏れでも支払義務は残る(保険で大部分がカバーされる) |
所有権を侵害する行為は契約で禁じられている
リース事業協会が公開している契約書の条項例では、リース会社が所有権を有する旨の標識を物件に貼付し、使用者はリース会社の所有権を侵害する行為をしないと定められています。売却・譲渡・担保提供はここに触れます。
返還についても条項があります。契約が終了したとき、使用者は自身の責任と負担でリース期間中に生じた損傷を原状回復したうえ、リース会社が指定する場所に物件を返還するという定めです。つまり返還には取り外し・運搬の実費がかかり、それは使用者側の持ち出しになります。
参照:公益社団法人リース事業協会「リース契約書の主な条項」(2026年9月7日確認)
厨房機器のリース料に含まれるもの
月々のリース料は物件価格を期間で割った金額ではありません。リース会社が所有者として負担する費用が上乗せされるため、支払総額は物件価格を上回るのが構造上の前提になります。
| リース料に反映されるもの | 内容 |
|---|---|
| 物件価格 | リース会社が販売店から機器を購入した価格 |
| 金利相当額 | リース会社が資金を立て替えている期間に対応する部分 |
| 固定資産税 | 所有者であるリース会社に課される税金 |
| 動産総合保険料 | 物件に付される保険の費用。滅失・損傷の大部分をこれでカバーする |
| 手数料 | 契約事務や管理にかかる費用 |
見積もりを取るときに比べるべきは月額だけではありません。月額 × 支払回数で総支払額を出し、同じ機器を購入した場合の価格と並べる——この一手で判断材料がそろいます。当サイトが料率や月額の一覧を出していないのは、これらが機器の構成・契約期間・与信で変わり、一般化した数字が判断を誤らせるためです。
リース期間には税務上の下限がある
期間を短くすれば1件あたりの拘束は短くなりますが、短すぎる期間は税務上の区分が変わります。国税庁は、リース期間がリース資産の法定耐用年数の70パーセント(法定耐用年数が10年以上の場合は60パーセント)に相当する年数を下回るものは、所有権移転リース取引に該当すると示しています。
| 機器の区分 | 法定耐用年数 | 70パーセントに相当する年数 |
|---|---|---|
| 飲食店業用設備(機械及び装置) | 8年 | 5.6年 |
| 電気冷蔵庫・電気洗濯機その他これらに類する電気又はガス機器(器具及び備品) | 6年 | 4.2年 |
| 陳列だな・陳列ケース(冷凍機付き・冷蔵機付き) | 6年 | 4.2年 |
提示されたリース期間がこの年数を下回っているなら、税務処理が変わる可能性があります。契約前に、どの区分の資産として何年で組んだ見積もりなのかをリース会社に確認してください。
参照:国税庁「No.5704 所有権移転外リース取引の判定」/国税庁「耐用年数表」(いずれも2026年9月7日確認。国税庁の記載は令和7年4月1日現在法令等)
リースのデメリットは閉店時に出る
リースの負担はふだん月額に均されているため、営業中は見えにくい構造です。負担が一度に表面化するのは閉店・移転・業態変更を決めたときで、購入した機器との差はここで最大になります。
| 閉店時に起きること | リース機器 | 購入した機器 |
|---|---|---|
| 残っている支払い | 残リース料または相当額の違約金を一括で払う | なし(割賦の残債があれば別) |
| 機器の行き先 | リース会社の指定場所へ返還 | 買取・造作譲渡・廃棄から選べる |
| 取り外し・運搬の費用 | 使用者の負担 | 買取に出せば業者側の作業に乗せられる |
| 手元に入るお金 | 入らない | 買取額が入る |
| 原状回復 | リース期間中に生じた物件の損傷は使用者が回復 | 機器そのものの回復義務はない |
差は金額だけではありません。リース機器は返還の日程がリース会社の都合にも左右されるため、退去日から逆算した段取りに組み込みにくくなります。閉店の全体像は閉店でやることの時系列、費用の内訳は閉店費用の内訳にまとめています。
リース機器がある店の見積もりは二重に取る
閉店を決めたら、購入機器の買取査定とリース機器の解約清算金を同じタイミングで出してもらってください。買取額が確定していれば、清算金の支払いにどれだけ充てられるかが読めます。順番を分けると、資金の見通しが立たないまま退去日が近づきます。
リース物件は売却も処分もできない
閉店の準備でつまずきやすいのが、機器リストの作り方です。厨房に並んでいる機器は見た目で区別がつかないため、購入品とリース品が混ざったまま査定に出してしまう事故が起きます。
所有権がリース会社にある以上、リース品を売ることも、勝手に廃棄することもできません。査定の直前や搬出当日に発覚すると、その日の作業が組み直しになります。割賦購入で所有権留保が付いている機器も同じ扱いです。
| 確認する場所 | 見るもの |
|---|---|
| 機器本体 | リース会社の所有権標識(プレート・シール)が貼られていないか |
| 契約書類 | リース契約書・物件受領書。物件名と型式が機器と一致するか |
| 会計帳簿 | 固定資産台帳に載っているか、リース料として費用処理されているか |
| 支払記録 | 毎月同額の引き落としが続いている先がないか |
この4点を突き合わせると、購入品とリース品はほぼ確実に仕分けられます。仕分けが終わってから、購入品だけのリストで査定を依頼してください。比較表の各社に同じリストを渡せば、条件をそろえた比較ができます。
リース満了後に選べる道
リース期間が満了すると契約は終了します。そこから先の選択肢は契約の内容で決まるため、閉店や入れ替えの時期を考えるうえで満了日は重要な区切りになります。
| 満了時の選択肢 | 内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 再リース | 引き続き使いたいときに契約を延長する | 再リース料の水準と期間 |
| 返還 | 使用者の負担で、リース会社が指定する場所に返還する | 取り外し・運搬を誰が手配するか |
| 買い取り | リース会社が応じる場合に限られる | 契約書に定めがあるか。無い場合は個別の交渉になる |
リース事業協会の説明では、満了時に案内されるのは再リースか返還の2つです。買い取りができるかどうかは契約とリース会社の判断によるため、満了前に条件を確認しておく必要があります。
閉店の時期を選べる状況なら、満了日を軸に退去日を組む方法があります。満了後まで営業を続けられれば違約金は発生せず、返還だけで済みます。逆に満了直前に閉めると、短い残期間でも清算金が発生します。
リース料の税務上の扱いを押さえる
リース料を経費として落とせるかどうかは、多くの店が気にする点です。所有権移転外ファイナンス・リース取引については、国税庁が税務上の取扱いを示しており、実務上の結論はそれほど複雑ではありません。
| 論点 | 国税庁が示している取扱い |
|---|---|
| 取引の性格 | リース資産の引渡しの時に売買があったものとして取り扱う |
| 償却方法 | 所有権移転外リース取引はリース期間定額法 |
| リース料を費用処理した場合 | 賃借料として損金経理した金額は、償却費として損金経理した金額に含まれる |
| リース取引の要件 | 中途解約が禁止されているか、解約時に未経過リース料のおおむね全部(原則として90パーセント以上)を支払うもの |
要点は3行目です。毎月のリース料をそのまま費用として処理していても、税務上は償却費として扱われるため、通常の運用では追加の手当てが要りません。個別の判断は顧問税理士または所轄の税務署に確認してください。
設備投資の減税はリースでも使える場合がある
中小企業投資促進税制では、所有権移転外ファイナンス・リースで取得した資産について特別償却は適用できないが、税額控除は適用できると国税庁が示しています。対象事業には料理店業その他の飲食店業が含まれます(料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブ等は生活衛生同業組合の組合員が行うものに限られます)。
対象資産は1台または1基の取得価額が160万円以上の機械・装置などで、指定期間は令和9年(2027年)3月31日までとされています。厨房機器がこの区分に当たるかは機器の内容によるため、リース会社と税理士の双方に確認するのが確実です。
参照:国税庁「No.5702 リース取引の借主における税務上の取扱い」/国税庁「No.5433 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除」(いずれも2026年9月7日確認。記載は令和7年4月1日現在法令等)
リースが向く店と購入が向く店
どちらが正解と言い切れる問いではありません。判断を決めるのは、開業からの年数・資金の余裕・出店期間の見通しの3つです。自店がどちらに寄っているかで選べば、後から後悔する要素が減ります。
| 状況 | 向いているのは | 理由 |
|---|---|---|
| 開業直後で自己資金が薄い | リース | 初期費用を運転資金に回せる |
| 賃貸借契約が長く、当面動かない | どちらでも可 | 期間の拘束が問題になりにくい |
| 数年内の撤退・移転がありうる | 購入 | 中途解約の違約金を負わずに済む |
| 短期の催事・季節営業 | レンタル | リースは長期・中途解約不可が前提 |
| 資金があり、機器を資産として持ちたい | 購入 | 閉店時に売却して回収できる |
見送るべき場面もはっきりしています。撤退の可能性を検討している段階でリースを組むのは避けてください。拘束期間が判断の自由を奪い、結果として違約金という形で費用が増えます。閉店を検討中なら閉店時の買取ガイドを先に読んでください。
リースの代わりに中古購入を選ぶ判断
初期費用を抑えたい理由でリースを検討しているなら、中古機器の購入がもう一つの答えになります。所有権が自店に残るため、閉店時に売却して回収できる点がリースとの決定的な違いです。
| 比べる点 | リース | 中古購入 |
|---|---|---|
| 支払い方 | 月額で分割。総額は物件価格を上回る | 取得時に一括。金額は新品より低い |
| 所有権 | リース会社 | 自店 |
| やめるとき | 違約金と返還 | 買取に出して回収 |
| 保証 | 契約内容による | 販売店の保証条件による |
中古機器は、閉店した店から回収された機器が整備されて流通しています。買取業者は仕入れる側でもあるため、売る話と買う話の両方を同じ窓口で相談できることがあります。値の付き方は買取相場の決まり方、廃棄が必要な機器の手続きは業務用冷蔵庫の処分にまとめました。
閉店や入れ替えで機器を手放す側に回るときは、業務用冷蔵庫の買取ページと比較表で、出張対応と搬出体制のある業者を確認してください。廃業の届出は廃業手続きの一覧で確認できます。
厨房機器のリースに関するよくある質問
リース中の厨房機器を売ることはできますか?
できません。リース物件の所有権はリース会社にあり、契約書でも所有権を侵害する行為をしない旨が定められています。閉店時は返還になり、残っている期間があれば残リース料または相当額の違約金の支払いが必要です。売却できるのは購入した機器だけです。
途中で解約したいときはどうなりますか?
リース期間中の中途解約は原則できません。合意で解約する場合は、残リース料または残リース料相当額の違約金を一括で支払うことになります。法人税法上のリース取引の要件でも、解約時に未経過リース料のおおむね全部(原則として90パーセント以上)を支払うものとされています。
リース料は経費として処理できますか?
所有権移転外ファイナンス・リース取引では、税務上は売買があったものとして取り扱われますが、賃借料として損金経理をした金額は償却費として損金経理をした金額に含まれるとされています。毎月のリース料をそのまま費用処理する運用が一般的です。個別の判断は税理士または所轄の税務署に確認してください。
リース期間が終わったら機器はもらえますか?
もらえません。所有権移転外リース取引では使用者に所有権が当然に移ることはなく、満了時は再リースか返還になります。買い取りに応じるかどうかはリース会社と契約の定めによるため、満了前に確認してください。
短期間だけ使いたい場合もリースですか?
リースは長期・中途解約不可が前提の契約なので、催事や季節営業のような短期利用には向きません。短期の利用にはレンタルという別の仕組みがあります。使う期間が読めない場合は、契約の縛りが軽いほうから検討してください。
リース機器と購入機器が混ざっているか、どう見分けますか?
まず機器本体にリース会社の所有権標識が貼られていないかを見てください。次にリース契約書・物件受領書の型式と機器を突き合わせ、固定資産台帳に載っているかを確認します。毎月同額の引き落としが続いている先があれば、その契約書を探すのが早道です。
この記事を書いた人
執筆・編集:厨房機器買取ナビ 編集部
飲食店の閉店・入れ替えで業務用の厨房機器を売るときの買取業者を、対応エリア・買取方法・得意な品目で比較しています。掲載している業者の情報は各社の公表情報、フロン排出抑制法など制度の内容は省庁の公表資料をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。
最終更新:2026年9月4日
