閉店の作業は、複数の系統が同時に進みます。契約(解約予告と退去日)・機器の出口・従業員の手続き・取引先の清算・行政への届出——このどれもが独立していて、それぞれに期限があります。
難しいのは、これらの多くが「退去日」という1点に向かって収束することです。退去日は契約で決まっており、こちらの都合では動きません。だから閉店の進め方は、やることを並べるのではなく退去日から逆算して並べ直すのが正解になります。
この記事では、系統ごとのやることと、逆算したときの時系列を整理します。
目次
やることは5つの系統に分かれる
| 系統 | やること | 期限の性格 |
|---|---|---|
| 契約 | 解約予告、退去日の確定、原状回復の範囲の確認、造作譲渡の可否 | すべての起点。予告期間は契約で決まる |
| 機器・什器 | リストアップ、買取査定、搬出、値がつかない物の処分 | 原状回復の着工前が締め切り |
| 従業員 | 解雇予告、給与・社会保険の清算、離職票の手配 | 法定の期限がある |
| 取引先・契約サービス | 仕入先への連絡、リース契約、通信・電気・ガス・水道、POSや予約システム | 解約に予告期間があるものが多い |
| 行政への届出 | 保健所・税務署・消防・警察(該当店のみ)・年金事務所など | 閉店後の手続きが中心 |
この表で押さえておきたいのは、行政への届出は基本的に「閉店したあと」の作業だということです。閉店前にやるべきことに追われて届出を後回しにするのは、順番としては間違っていません。ただし期限のあるものがあるため、リストだけは先に作っておきます。
届出の詳細は飲食店の廃業手続きにまとめています。
退去日から逆算した時系列
退去日を起点に並べ直すと、次のようになります。実際の期間は契約と物件によって変わるので、目安として使ってください。
| 時期 | やること | ここを外すと |
|---|---|---|
| 解約予告の期限まで | 契約書を確認し、貸主へ解約を通知する。原状回復の範囲と造作譲渡の可否も確認 | 予告が遅れるとその分の賃料が延びる |
| 閉店の1〜2か月前 | 居抜き譲渡の可能性を探る。並行して機器リストを作る | 譲渡先探しは時間がかかる。遅いと選択肢が消える |
| 閉店の2〜4週間前 | 機器の写真査定を2〜3社に依頼。従業員への通知 | 比較の余地がなくなり、提示額をそのまま受けることになる |
| 最終営業日の前後 | 搬出日を確定。冷機は霜取り、製氷機は水抜き。取引先・サービスの解約 | 準備不足で当日に搬出できない |
| 搬出〜原状回復の着工前 | 機器の搬出と精算。値がつかない物の処分手配 | 着工後は機器が残置物になり処分費がかかる |
| 退去後 | 保健所・税務署などへの届出。保証金の精算確認 | 期限のある届出を逃す |
この時系列で一番の分岐点は、「搬出が原状回復の着工前に終わるか」です。ここを越えると機器は売り物から処分対象に変わり、収入がマイナスの費用に反転します。
順番を間違えると損をする3つの場面
実務でよく起きる、順番の失敗を挙げます。
1. 原状回復業者に一括で頼んでしまう
「まとめてお願いします」と原状回復業者に任せると、機器も残置物として処分されます。売れば収入になった機器に処分費を払うことになり、差は二重につきます。機器の査定を先に取り、搬出してから工事を依頼してください。
2. 居抜き譲渡の結論を待ちすぎる
造作譲渡が成立すれば原状回復費の大半が不要になるため、期待して待ちたくなります。しかし買い手探しの期間中も賃料は発生し続けます。「◯月◯日までに決まらなければ買取に切り替える」と締め切りを決めて、買取査定を並行して取っておくのが安全な進め方です。
3. リース品を売却リストに入れてしまう
リース契約中の機器は所有権がリース会社にあり、売ることはできません。割賦購入で所有権留保がついている場合も同じです。機器リストを作る段階で購入品とリース品を分け、リース品は契約先に返却・中途解約の扱いを確認してください。査定の直前に発覚すると日程が崩れます。
機器リストの作り方
閉店作業の中で、もっとも早く着手できてもっとも効くのが機器リストです。作り方は単純です。
- 銘板シールの写真を撮って回る——メーカー・型式・製造年が1枚に収まっています。査定に必要な情報のほぼすべてです
- 購入品とリース品を分ける——契約書か経理の記録で確認します
- 設置状態を記録する——置き型か、ガス・給排水・電源につながっているか。切り離し工事の要否が変わります
- 搬出経路を確認する——階数、エレベーターの有無と寸法、階段の幅、建物の搬出時間制限
これがあれば写真査定に出せます。訪問なしで2〜3社の概算が並ぶので、営業しながらでも比較が進みます。
査定の進め方は買取相場の決まり方、閉店時の買取全体は閉店時の買取ガイドにまとめています。
飲食店の閉店手続きに関するよくある質問
閉店することを取引先にいつ伝えればいいですか?
仕入先は最終営業日と最終発注日を早めに共有すると在庫が余りません。リース・レンタル契約や通信・POSなどのサービスは解約に予告期間があるものが多いため、契約書を確認して逆算してください。
営業しながら機器を売ることはできますか?
できます。使わなくなった機器から順に売る方法は、閉店を公にしたくない時期の資金化にも使われます。営業中の搬出は時間帯の制約があるため、搬出条件を業者と詰めてください。
従業員への通知はいつすればいいですか?
解雇には法律で予告の期限が定められています。閉店の日程が固まった段階で、労働基準監督署や社会保険労務士に自店のケースを確認したうえで進めてください。当サイトは労務の個別判断には踏み込みません。
退去日を延ばすことはできますか?
貸主との合意があれば可能な場合もありますが、その分の賃料が発生します。延長できるかどうかに関わらず、機器の搬出は原状回復の着工前に終える必要があります。
この記事を書いた人
執筆・編集:厨房機器買取ナビ 編集部
飲食店の閉店・入れ替えで業務用の厨房機器を売るときの買取業者を、対応エリア・買取方法・得意な品目で比較しています。掲載している業者の情報は各社の公表情報、フロン排出抑制法など制度の内容は省庁の公表資料をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。
最終更新:2026年9月4日
