業務用冷蔵庫の処分は、家庭用冷蔵庫の延長では進められません。冷媒にフロン類を使う業務用の冷凍冷蔵機器は「フロン排出抑制法」の第一種特定製品にあたり、廃棄には法律で定められた手続きがともないます。
手続きを飛ばすと罰則の対象になります。フロン類を回収しないまま廃棄すれば50万円以下の罰金、行程管理票の引取証明書の写しを交付しなければ30万円以下の罰金です。「無料で引き取ります」という業者にそのまま渡して、義務だけが自分に残る——これが業務用冷蔵庫の処分でもっとも避けたい失敗です。
この記事では、処分に必要な手続き、処分ルートごとの費用の構造、そして「捨てる前に売れるか確かめる」ことで費用と手続きの両方を減らす順番を整理します。
目次
処分に必要な手続きは3つある
業務用の冷蔵庫・冷凍庫・冷蔵ショーケースは、フロン排出抑制法の第一種特定製品です。事業者が廃棄するときの義務は次の3つに整理できます。
| 義務 | 内容 | 怠った場合 |
|---|---|---|
| フロン類の回収 | 都道府県に登録された第一種フロン類充填回収業者に引き渡す | 50万円以下の罰金(行政処分に加えて) |
| 行程管理票の交付 | 回収依頼から引き渡しまでを書面で管理し、引取証明書の写しを交付する | 30万円以下の罰金 |
| 記録の保存 | フロン類の引き渡し完了から3年間保存する | — |
加えて、フロン類をみだりに大気中へ放出する行為には1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。つまり「自分で配管を切って運び出す」という選択肢は、業務用機器では最初から存在しません。
もう一点、押さえておきたいのが両罰規定です。従業者が違反行為をした場合、行為者本人だけでなく法人にも罰金刑が科されうると定められています。「現場の判断でやったこと」では済まない構造になっています。
この3つを、誰がどこまでやるのか。処分を依頼するときに確認すべきなのは金額よりも先にこの分担です。買取業者・回収業者に任せる場合でも、引取証明書の写しが自分の手元に残るかが確認の要点になります。
回収業者は都道府県の登録簿で探せる
フロン類を回収できるのは都道府県知事の登録を受けた第一種フロン類充塡回収業者だけです。登録は5年ごとの更新制で、無登録の営業には罰則があります。
登録業者は自分でも探せます。環境省のフロン排出抑制法ポータルサイトに47都道府県の登録簿へのリンクをまとめたページがあり、都道府県によっては検索システムやExcel・CSVの名簿が公開されています。業者から提示された会社名が登録簿にあるかを確認したい場合は、ここを見れば足ります。
参照:環境省「フロン排出抑制法ポータルサイト」(2026年9月4日確認)。制度の詳細・様式・登録業者名簿は環境省の案内をご確認ください。
処分ルートは3つ。順番を間違えると高くつく
業務用冷蔵庫の出口は大きく3つあります。費用のかからない順に並べると、確認すべき順番がそのまま決まります。
| ルート | 費用の構造 | 向いているケース |
|---|---|---|
| ① 買取業者に売る | 買取額が入る。搬出・引き取りは業者側の作業に乗る | 製造からおおむね7〜10年以内で正常に動く機器 |
| ② 買取業者に引き取ってもらう | 0円〜引き取り費。処分の手配ごと任せられる | 値はつかないが、まとめ売りの一部として動かせる機器 |
| ③ 廃棄(産業廃棄物として処理) | フロン回収費+収集運搬費+処分費が全額かかる | 故障品・中古市場で流通のない型 |
重要なのは、①→②→③の順で確かめることです。③から始めると、売れたはずの機器にも処分費を払うことになります。①②は査定1回で同時に確認できるため、実務としては「まず査定に出し、値がつかなければ引き取りと廃棄の費用を比べる」の一手で足ります。
費用は3層に分かれている
③を選んだ場合、見積書に出てくる金額は1つではありません。次の3層に分かれます。
- フロン回収費——登録業者が冷媒を回収する作業の費用。機器の大きさと冷媒量で変わります
- 収集運搬費——機器を現場から運び出して処理施設へ運ぶ費用。搬出経路(階数・エレベーターの有無)で変わります
- 処分費——処理施設での処理費用。重量で決まることが多い部分です
見積もりを取るときは、この3つを分けて提示してもらってください。一式いくらでまとめられると、他社と比べられないうえに、どこが割高なのかも判断できません。当サイトが金額の一覧を掲載していないのも、これらが機器の大きさ・設置状況・地域で大きく変わるためです。
「無料回収」を頼むときに確認する3点
「不要な厨房機器を無料で引き取ります」という案内は珍しくありません。無料であること自体が問題なのではなく、法律上の手続きが実行されるかどうかが問題です。次の3点を確認してください。
| 確認すること | なぜ必要か | 確認できないときの意味 |
|---|---|---|
| フロン類は誰が回収するか | 回収できるのは都道府県に登録された第一種フロン類充填回収業者だけ | 回収されないまま解体されれば、廃棄した側が罰則の対象になりうる |
| 引取証明書の写しをもらえるか | 交付は法律上の義務。手元に残らなければ義務を果たした記録がない | 3年間の保存義務を果たせない |
| 廃棄物として運ぶ許可があるか | 事業所から出る廃棄物を運ぶには産業廃棄物収集運搬業の許可が要る | 不法投棄された場合、排出事業者の責任が問われうる |
買取業者が自社で回収まで行う必要はありません。提携する登録業者に回す形でもまったく問題ないので、確認すべきは「誰がやるか」ではなく「書面が自分の手元に残るか」です。
登録を公表している業者は多くない
当サイトの掲載10社について、2026年9月4日に各社の公式サイトを確認したところ、第一種フロン類充填回収業者の登録番号を公表していたのはLIFE MARK'Sの1社(愛知県 第1231001051号)でした。電気工事業者登録を公表していたのは厨房買取プロの1社です。
これは「他の8社が対応できない」という意味ではありません。公表していないだけの場合も、提携先に回す場合もあります。公表がない業者に頼むときほど、上の3点を口頭で確認してください。各社の登録状況は比較表に記載しています。
売れるかどうかの分かれ目は3つ
①のルートに乗るかどうかは、次の3点でほぼ決まります。
| 条件 | 買取の土俵に乗る | 乗りにくい |
|---|---|---|
| 製造年 | おおむね7年以内。10年前後は業者・型による | 10年超で部品供給の終わった型 |
| メーカー | ホシザキ・フクシマガリレイ・大和冷機・パナソニックなど流通量の多い国内メーカー | 中古市場で流通の少ない型 |
| 動作・状態 | 設定温度まで冷える。異音・霜の異常付着がない | 冷えない、ガス抜け、扉のゆがみ |
製造年は庫内または側面の銘板シールで確認できます。ここに型式と製造年月が書かれており、査定に必要な情報がほぼ1枚に収まっています。写真を撮って2〜3社に送れば、訪問なしで概算が並びます。
帳簿上の価値と買取価格は別物
国税庁の耐用年数表では業務用の冷蔵庫は6年、飲食店業用設備は8年とされています。ただしこれは減価償却の基準であって、中古市場の基準ではありません。帳簿上の価値がゼロでも市場で動く機器には値がつき、逆に帳簿に残っていても流通しない機器には値がつきません。
「まだ償却が終わっていないから売れるはず」「もう償却済みだから価値はない」——どちらも判断としては外れます。判断材料は製造年と動作で、そこは自分で確認できます。
値がつく条件の詳細は業務用冷蔵庫の買取ページ、業者の比較は比較表にまとめています。
機器の種類ごとに手続きが変わる
「業務用冷蔵庫」と一口に言っても、厨房にある冷やす機器はいくつもあります。フロン類を使っているかどうかで手続きが変わるので、まず自店の機器がどれにあたるかを確認してください。
| 機器 | フロン法の対象 | 処分前にやること |
|---|---|---|
| 縦型冷蔵庫・冷凍庫 | 対象(第一種特定製品) | 中身を出す、電源を切って霜取り、フロン回収の手配 |
| コールドテーブル(台下冷蔵庫) | 対象 | 同上。天板の上の機器を先にどける |
| 冷蔵・冷凍ショーケース | 対象 | 同上。ガラス面の養生が必要な場合がある |
| 冷凍ストッカー | 対象 | 同上。霜が厚いと重量が増えるため必ず霜取り |
| プレハブ冷蔵庫・冷凍庫 | 対象 | 解体工事をともなう。工事対応のできる業者が必要 |
| 製氷機 | 対象 | 給排水の切り離しと水抜き(解説) |
| 冷蔵庫用の棚・作業台 | 対象外 | 金属として扱われる。まとめ売りの対象になりやすい |
見落とされやすいのがプレハブ冷蔵庫(ウォークイン)です。パネルを組んで作られているため解体工事が必要で、通常の買取業者では対応できないことがあります。冷凍機ユニットにはフロン類が入っているので、回収の手続きも必要です。工事対応のできる業者かどうかを最初に確認してください。
もう1点、ノンフロン機器(自然冷媒を使った機器)は対象外です。近年の機種には自然冷媒のものがあり、その場合はフロン回収の手続きが不要になります。銘板に冷媒の種類が記載されているので確認してください。
廃棄する前のチェックリスト
最後に、処分を決める前に確認しておくと後戻りしなくて済む項目をまとめます。
- リース品ではないか——リース契約中の機器は所有権がリース会社にあり、売ることも勝手に処分することもできません。割賦購入で所有権留保がついている場合も同じです
- 退去日から逆算できているか——原状回復工事が始まると機器は搬出できず、残置物として処分費のかかる側に回ります
- まとめられる機器が他にないか——出張買取は業者側に移動のコストがかかるため、1台だけより複数台まとめたほうが査定全体では有利になりやすい構造です
- 中身を空にして霜取りができるか——霜と汚れが付いたままだと状態の確認ができず、低く見積もる方向に働きます。前日に電源を切っておくだけで違います
- 付属品がそろっているか——棚板・仕切り・鍵。欠品は再販時の値引き要因になるため査定にも響きます
閉店にともなう処分であれば、機器単体ではなく店舗全体の出口から考える必要があります。段取りは閉店時の買取ガイドに、届出は廃業手続きの一覧にまとめています。
廃業・閉店の場合に起きやすい失敗
単に機器を1台入れ替えるときと、店ごと畳むときでは、処分の難しさがまったく違います。閉店にともなう処分でよく起きる失敗を3つ挙げます。
1. 原状回復業者にまとめて任せてしまう
「機器も含めて全部お願いします」と原状回復業者に依頼すると、機器は残置物として工事の見積もりに乗ります。フロン機器であれば回収費も加算されます。売れば収入になったはずの機器に、逆に処分費を払うことになるので、差は二重につきます。
順番としては、買取査定 → 搬出 → 原状回復の着工です。この順を守るだけで総額が変わります。
2. リース品を売却リストに入れてしまう
リース契約中の機器は所有権がリース会社にあり、売ることも勝手に処分することもできません。割賦購入で所有権留保がついている場合も同じです。査定の直前に発覚すると日程が崩れるので、機器リストを作る段階で購入品と分け、リース会社に返却・中途解約の扱いを確認してください。
3. 引取証明書の写しを受け取らないまま終わる
搬出が終わると作業が完了した気分になりますが、フロン機器を廃棄した場合は書面が残っていなければ義務を果たした記録がありません。引取証明書の写しは交付が義務づけられており、引き渡し完了から3年間の保存が必要です。撤収の慌ただしさの中で受け取り忘れないよう、見積もりの段階で「いつ・どういう形で渡されるか」を確認しておいてください。
業務用冷蔵庫の処分に関するよくある質問
家庭用と同じように家電リサイクル券で処分できますか?
できません。家電リサイクル法の対象は家庭用として製造・販売された4品目で、業務用の冷凍冷蔵機器は対象外です(経済産業省のFAQに明記されています)。業務用機器はフロン排出抑制法(第一種特定製品)と廃棄物処理法にもとづく処理になります。なお判定の軸は「どこで使っていたか」ではなく「何用として製造・販売されたか」で、家庭用の機器を店舗で使っていた場合は家電リサイクル法の対象になります。
ノンフロンの機器でも手続きは必要ですか?
自然冷媒を使ったノンフロン機器であれば、フロン排出抑制法にもとづく回収の手続きは不要です。ただし事業所から出る廃棄物であることに変わりはないため、廃棄物としての処理は必要です。冷媒の種類は本体の銘板に記載されています。
プレハブ冷蔵庫(ウォークイン)も同じですか?
冷凍機ユニットにフロン類が入っているため、回収の手続きは同じく必要です。加えてパネルの解体工事がともなうため、工事に対応できる業者かどうかを最初に確認してください。通常の買取業者では対応できない場合があります。
フロン回収は誰に頼めばいいですか?
都道府県に登録された第一種フロン類充填回収業者です。買取業者・処分業者を経由して依頼する場合も、最終的に登録業者が回収し、行程管理票と引取証明書が発行される流れになっているかを確認してください。
処分費用はいくらぐらいかかりますか?
機器の大きさ・設置状況・地域で変わるため、当サイトでは金額の一覧を掲載していません。見積もりを取る際に「フロン回収費」「収集運搬費」「処分費」を分けて提示してもらうと比較ができます。買取・引き取りの可否を先に確認すれば、この費用自体を減らせる可能性があります。
冷えなくなった冷蔵庫でも買い取ってもらえますか?
再販できないため買取は難しいのが実情です。ただし部品取りとしての引き取りに対応する業者もあります。いずれにせよ廃棄にはフロン類の回収が必要なので、その手続きに対応できるかを含めて相談してください。
何台からまとめて依頼できますか?
業者によりますが、出張買取は移動と人員のコストがかかるため、点数がまとまっているほうが条件は良くなりやすい構造です。1台だけの場合は、持ち込みができる業者や宅配買取の対象になるかを確認する方法もあります。
この記事を書いた人
執筆・編集:厨房機器買取ナビ 編集部
飲食店の閉店・入れ替えで業務用の厨房機器を売るときの買取業者を、対応エリア・買取方法・得意な品目で比較しています。掲載している業者の情報は各社の公表情報、フロン排出抑制法など制度の内容は省庁の公表資料をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。
最終更新:2026年9月4日
