閉店を決めたあと、多くの経営者が最初に直面するのが「畳むのにいくらかかるのか」という問題です。開業の費用は事前に調べても、閉店の費用は調べないまま当日を迎えることが多い——そして、その結果として想定外の請求に驚くことになります。
閉店費用は1つの金額ではなく、性格の違う5つの費目の合計です。そしてそのうち圧縮できるものと、できないものがはっきり分かれています。
この記事では費目ごとの中身と、どこに手を入れれば負担が減るのかを整理します。金額は物件・規模・地域で大きく変わるため、当サイトでは相場の一覧は掲載していません。代わりに「何を確認すれば見積もりを比べられるか」を示します。
閉店費用は5つの費目に分かれる
閉店にかかる費用は、次の5つに整理できます。圧縮できる余地は費目ごとにまったく違います。
| 費目 | 中身 | 圧縮の余地 |
|---|---|---|
| 原状回復工事費 | 内装の解体、スケルトン戻し、廃材処分 | 大きい(居抜き譲渡が成立すれば大半が不要になる) |
| 機器・什器の処分費 | 厨房機器・家具・備品の撤去と処分。フロン機器は回収費も | 大きい(買取に回せばマイナスがプラスに転じる) |
| 賃料・共益費 | 解約予告期間中の賃料。工事期間中も発生する | 小さい(契約で決まっている) |
| 人件費・清算 | 従業員の給与・解雇予告手当など | なし(法定の義務) |
| 違約金・原状回復以外の契約上の負担 | 中途解約の違約金、保証金からの相殺 | 小さい(契約書の条項による) |
ここから読み取れるのは、手を入れる価値があるのは上の2つだけということです。賃料と人件費と違約金は契約と法律で決まっており、交渉の余地はほとんどありません。逆に言えば、原状回復と機器の出口をどう設計するかで、閉店費用の総額は大きく変わります。
参考までに、帝国データバンクの調査では2025年の飲食店倒産は900件と過去最多を更新し、3年連続で増加しました。負債5,000万円未満の小規模な事業者が77.3%を占めています。撤退は珍しいことではなく、費用の抑え方もある程度は定型化しています。
原状回復費と機器処分費は連動している
この2つは別々に見積もられることが多いのですが、実務上は連動しています。
- 機器を先に搬出すれば——原状回復業者が扱う残置物が減り、その分の処分費が下がります
- 機器を残したまま工事に入れば——機器は「残置物」として原状回復の見積もりに乗ります。買取に出せば収入になったはずのものに、逆に処分費を払うことになります
つまり順番の問題です。買取査定 → 搬出 → 原状回復工事の着工という順を守るだけで、同じ店でも総額が変わります。
フロン機器は残すと確実に費用が増える
業務用冷蔵庫・製氷機・冷蔵ショーケース・業務用エアコンは、フロン排出抑制法の第一種特定製品です。廃棄には登録業者によるフロン類の回収と行程管理票が必要で、その費用は原状回復の見積もりに含まれます。
動く機器であれば買取に回すことで、この費用ごと消せる可能性があります。手続きの詳細は業務用冷蔵庫の処分と業務用エアコンの処分にまとめています。
見積もりで確認する4点
閉店費用の見積もりは、業者によって含まれる範囲が違います。金額だけを並べても比較になりません。次の4点がどう扱われているかを揃えてから比べてください。
| 確認すること | なぜ差が出るか |
|---|---|
| どこまで解体するか | スケルトン戻しの範囲は契約書と貸主の指定で決まる。床・天井・厨房設備をどこまで撤去するかで金額が変わる |
| 残置物の処分が含まれるか | 「工事費」に処分費が入っているか別立てかで総額の見え方が変わる |
| フロン機器の回収費の扱い | 法定の手続きなので必ず費用が発生する。含まれていない見積もりは後から追加になる |
| 工事期間と賃料の関係 | 工事が長引けばその分の賃料が発生する。工期は総額に直結する |
とくに1つ目は、貸主指定の業者に頼む場合とそうでない場合で差が出やすい部分です。契約書の原状回復条項を先に読み、どこまでが義務なのかを確認してから見積もりを依頼してください。詳しくは店舗の原状回復費用にまとめています。
費用を抑える順番
やることの順番を決めておくと、判断に迷う時間が減ります。
- 契約書を確認する——解約予告期間、原状回復の範囲、造作譲渡の可否(貸主の承諾が要るか)
- 居抜き譲渡の可能性を探る——成立すれば原状回復費の大半が不要になります。ただし時間が読めないので締め切りを決めておきます
- 並行して機器の買取査定を取る——居抜きが流れたときの備えになり、査定自体に費用はかかりません
- 原状回復の見積もりを取る——上の2つの結論が出てから。機器を搬出した前提で依頼します
- 従業員・取引先への対応——法定の手続きは期限があるので早めに着手します
この順番の要点は、2と3を同時に走らせることです。居抜きの買い手探しには時間がかかり、その間も賃料は発生します。「◯月◯日までに決まらなければ買取に切り替える」と決めておけば、賃料の垂れ流しと残置物化の両方を避けられます。
閉店で必要な届出は飲食店の廃業手続き、当日までの段取りは閉店でやることにまとめています。
飲食店の閉店費用に関するよくある質問
閉店費用の相場はいくらですか?
物件の広さ・立地・原状回復の範囲・機器の量で大きく変わるため、当サイトでは相場の一覧を掲載していません。金額だけの目安を持って交渉すると話がかみ合わなくなります。見積もりを2〜3社から取り、含まれる範囲を揃えて比べてください。
保証金は戻ってきますか?
契約によります。原状回復費用を保証金から相殺する契約が多く、工事費が保証金を上回れば追加の支払いが発生します。契約書の保証金・敷金の条項と原状回復条項を合わせて確認してください。
機器を売ったお金で閉店費用をまかなえますか?
機器の年式と量によります。製造から年数の浅い冷機がまとまってあれば相応の額になりますが、閉店費用の全額をまかなえるとは限りません。まず査定を取り、実際の金額を見てから資金の計画を立ててください。
解約を伝える前に買取査定を取ってもいいですか?
問題ありません。査定に費用も義務も発生しないのが通常です。ただし解約予告期間は契約で決まっているため、退去日から逆算して動く必要があります。
この記事を書いた人
執筆・編集:厨房機器買取ナビ 編集部
飲食店の閉店・入れ替えで業務用の厨房機器を売るときの買取業者を、対応エリア・買取方法・得意な品目で比較しています。掲載している業者の情報は各社の公表情報、フロン排出抑制法など制度の内容は省庁の公表資料をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。
最終更新:2026年9月4日
