厨房機器の減価償却とは、機器の取得価額を法定耐用年数の期間に分割して経費へ落としていく仕組みです。年数は資産の区分で決まり、機械及び装置の「飲食店業用設備」なら8年、器具及び備品の電気冷蔵庫などは6年を使います。
同じ機器・同じ年数でも、毎年の経費の出方は計算方法で変わります。定額法は毎年同じ額、定率法は最初に多く年々減る——取得価額100万円・耐用年数6年なら、初年度の償却費は定額法で16万7,000円、定率法で33万3,000円と2倍の差が付きます。
この記事では、区分ごとの年数、定額法と定率法の計算と仕訳の型、耐用年数を使わずに経費へ落とせる金額の線引き、そして売却・廃棄・廃業のときに帳簿の残りをどう処理するかまでを、国税庁の一次情報にもとづいて整理します。
目次
厨房機器の減価償却は区分で決まる
減価償却の年数は機器の値段や寿命ではなく、固定資産台帳でどの資産区分に計上しているかで決まります。厨房設備を一式で計上していれば機械及び装置の「飲食店業用設備」=8年、機器を1台ずつ計上していれば器具及び備品の細目ごと(電気冷蔵庫などは6年)です。
| 計上のしかた | 区分・細目 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 厨房設備を一式で計上 | 機械及び装置「飲食店業用設備」 | 8年 |
| 機器を1台ずつ計上 | 器具及び備品「電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気又はガス機器」 | 6年 |
| 建物に組み込まれた設備 | 建物附属設備「給排水・衛生設備、ガス設備」 | 15年 |
取得価額が10万円未満の機器や使用可能期間が1年未満のものは、そもそも減価償却をせず、全額をその年の必要経費にできます。線引きの詳細は後の見出しで整理します。
フライヤーや製氷機のように耐用年数表に個別の名称がない機器は、どの区分・細目に当てはめるかの判断が要ります。当サイトは税務の個別判断には踏み込みません。取得日・取得価額・導入の形をそろえて、顧問税理士か所轄の税務署に確認してください。
参照:国税庁「耐用年数表」(2026年9月8日確認)
減価償却の方法は定額法と定率法
減価償却の計算方法は、毎年同じ額を経費にする定額法と、初年度に多く計上して年々減らしていく定率法の2つが柱です。どちらでも耐用年数の全期間で経費になる合計額は変わりません。変わるのは「いつ経費になるか」です。
取得価額100万円・耐用年数6年(償却率は定額法0.167・定率法0.333)で比べると、出方の違いがわかります。
| 年 | 定額法(毎年同額) | 定率法(前倒し型) |
|---|---|---|
| 1年目 | 16万7,000円 | 33万3,000円 |
| 2年目 | 16万7,000円 | 22万2,111円 |
| 3年目 | 16万7,000円 | 14万8,148円 |
定率法には償却保証額の仕組みがあり、計算した償却費が保証額(6年の保証率は0.09911)を下回る年からは、改定償却率(6年は0.334)で均等に償却します。ここまで来ると手計算では追いにくいため、会計ソフトか税理士に任せるのが現実的です。
開業初年度から利益が出る店は定率法で早く経費化する、利益が安定してから買い替える店は定額法で平準化する——どちらが有利かは店の損益しだいで、一概にどちらが得とは言えません。
参照:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却」/償却率は減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第八・第十/中小企業庁「少額減価償却資産の特例」(国税庁2ページは2026年9月8日、中小企業庁は2026年9月12日確認)
厨房機器の減価償却は個人と法人で違う
同じ厨房機器でも、個人事業主と法人では届出をしない場合に適用される償却方法が違います。国税庁は、所得税の法定の償却方法を一般的には定額法(平成19年3月31日以前取得分は旧定額法)と案内しています。
| 立場 | 届出をしない場合 | 方法を変えたいとき |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 定額法で計算する | 税務署への届出により選定できる |
| 法人 | 資産の種類ごとに法定の方法が定められている | 選定の届出により変更できる。自社がどの方法かは申告書と固定資産台帳で確認 |
個人で開業した飲食店が特に意識せず申告してきたなら、定額法で計算されているのが通常です。途中から方法を変えるには届出と要件の確認が必要になるため、変更を考える場合は事前に税理士か税務署に相談してください。
法人の法定償却方法は資産の区分ごとに細かく定められており、取得時期でも変わります。この記事では立ち入らず、自社の適用方法は決算書・申告書の別表で確認することをおすすめします。
参照:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」(2026年9月8日確認。国税庁の記載は令和7年4月1日現在法令等)
減価償却費の仕訳は2つの型がある
減価償却費の仕訳とは、決算で当期分の償却費を帳簿に載せる処理です。型は2つあり、資産の帳簿価額から直接引く直接法と、減価償却累計額という科目に積んでいく間接法があります。
| 型 | 借方 | 貸方 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 直接法 | 減価償却費 | 機械装置(または器具備品) | 資産の帳簿価額が直接減っていく。個人事業の青色申告で多い型 |
| 間接法 | 減価償却費 | 減価償却累計額 | 取得価額を残したまま累計額を別に積む。取得時の金額を後から追いやすい |
どちらの型でも損益に与える影響は同じです。大事なのは型の選択より、機器ごとの取得価額・取得日・償却の進み具合を固定資産台帳で追える状態にしておくことです。売却や廃棄のときは、この台帳の帳簿価額が処理の起点になります。
仕訳の科目名や運用は会計ソフトによって表記が異なります。迷ったら使っているソフトの設定と顧問税理士の方針に合わせてください。
減価償却をせずに経費にできる金額
取得価額によっては、耐用年数で分割せず短期で経費にできます。線引きは10万円・20万円・40万円の3段階です。
| 取得価額 | 処理 | 条件 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額をその年の必要経費にできる | 使用可能期間が1年未満のものも同じ扱い |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年間で3分の1ずつ経費にできる | 一括した取得価額の合計額の3分の1ずつを各年分に算入 |
| 40万円未満 | 中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額を損金算入できる | 青色申告、常時使用する従業員400人以下(出資金等が1億円超の組合等は300人以下)、年間合計300万円まで |
この特例は令和8年度税制改正で拡充されました。対象となる取得価額が40万円未満(改正前は30万円未満)に引き上げられ、適用期限は令和10年度末(令和11年3月31日)までです。対象は常時使用する従業員が400人以下の中小企業者等で、年間合計300万円までという限度は変わりません(中小企業庁「少額減価償却資産の特例」・2026年9月12日確認)。国税庁のタックスアンサーNo.5408は令和7年4月1日現在の法令等にもとづく記載のため、金額の基準が改正前の30万円未満のままになっています。
取得価額には本体だけでなく、搬入・設置など事業に使うまでに要した費用が含まれます。本体38万円+設置工事3万円なら41万円で、40万円の線を超えます。本体価格だけで判断しないでください。
参照:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」/国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」/中小企業庁「少額減価償却資産の特例」(国税庁2ページは2026年9月8日、中小企業庁は2026年9月12日確認)
中古の厨房機器は減価償却が早く進む
中古で取得した機器は、法定耐用年数をそのまま使わず、国税庁の簡便法で短い年数にできます。経過した年数が長いほど償却期間が縮み、初年度から多くの額を経費にできます。
| 状態 | 計算方法 | 例 |
|---|---|---|
| 法定耐用年数の全部を経過 | 法定耐用年数の20パーセント | 8年経過の8年物 → 1.6 → 2年(2年未満は2年) |
| 一部を経過 | (法定−経過)+経過×20パーセント | 8年物で3年経過 → 5.6 → 5年(端数切捨て) |
制限もあります。その中古資産を事業に使うために支出した資本的支出が取得価額の50パーセントを超える場合、簡便法は使えません。大きな修理を前提に安く仕入れるときは、この線に当たらないかを確認してください。
経過年数は本体の銘板に記載された製造年月から数えます。中古導入の資金面の利点と、売る側から見た年式の意味は表裏の関係です。買い手が早く償却できるのは年式が新しいうちで、中古市場の評価も同じ方向に動きます。
参照:国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」(2026年9月8日確認。国税庁の記載は令和7年4月1日現在法令等)
厨房機器を売ったときの仕訳と税金
機器を売却したら、売却額と帳簿価額(取得価額から償却累計を引いた残り)の差額を処理します。売却額が帳簿価額を上回れば売却益、下回れば売却損です。償却が終わる前でも売却はできます。
| ケース | 処理の考え方 |
|---|---|
| 法人が売却 | 帳簿価額との差額を固定資産売却益・売却損として計上する |
| 個人事業主が売却 | 事業用の機械・器具の譲渡は原則として譲渡所得(総合課税)になる |
| 10万円未満・一括償却資産として経費化した機器を売却 | 譲渡所得ではなく事業所得または雑所得になる |
個人事業主の場合、機器の売却収入を事業の売上に混ぜないのが要点です。国税庁は、事業用の減価償却資産の譲渡を原則譲渡所得とし、取得価額10万円未満や一括償却資産として経費化したものの譲渡は事業所得または雑所得になると案内しています。申告書での書き分けは顧問税理士か税務署に確認してください。
売却額そのものは査定で決まります。値の付き方は買取相場の決まり方に、業者ごとの対応は比較表にまとめています。
参照:国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」(2026年9月8日確認)
減価償却が終わる前の廃棄と廃業
償却の途中で機器を廃棄した場合、残っている帳簿価額は除却損として処理するのが基本の考え方です。使わない機器を帳簿に残したままにせず、実態に合わせて整理します。
個人事業主が廃業する場合は、もう一つ論点があります。国税庁は、事業の廃止にともない事業用資産に該当しなくなった資産を「事業を廃止した時点で家事のために消費または使用したものとして、事業として対価を得て譲渡したものとみなされる」と案内しています(みなし譲渡)。消費税の課税事業者だった場合、廃業時に残した機器が消費税の課税対象になり得るということです。
| 場面 | 帳簿・税務の論点 | 実務の要点 |
|---|---|---|
| 廃棄する | 残った帳簿価額の除却処理 | 冷凍冷蔵機器・エアコンはフロン類の回収が法律で義務。廃棄の証憑を残す |
| 廃業して機器を残す | みなし譲渡(消費税の課税事業者の場合) | 廃業前に売却して現金化すれば、帳簿の整理と資金回収が同時に進む |
| 廃業前に売却する | 売却損益の計上 | 動くうちに売るほうが値は付きやすい |
廃棄には処分費もかかります。厨房機器の処分手続きと費用の構造は厨房機器の処分方法に、閉店全体の段取りは閉店でやることの時系列にまとめています。税務の処理は個別性が高いため、廃業年の申告は税理士に相談することをおすすめします。
参照:国税庁「No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合」(2026年9月8日確認)
減価償却と買取価格は別物
帳簿の残りと中古市場の評価は連動しません。償却が終わって帳簿価額がほぼゼロの機器でも、市場で流通する型なら値が付きます。逆に帳簿に価値が残っていても、需要のない型や故障品には値が付きません。
| 判断の軸 | 税務(減価償却) | 買取市場 |
|---|---|---|
| 基準 | 取得日からの経過年数と区分 | 製造年・メーカー・動作状態 |
| 年式の見方 | 帳簿の取得日 | 本体の銘板に記載された製造年月 |
| 値が付く目安 | — | おおむね製造7年以内。10年前後は業者・型による |
「まだ償却が終わっていないから売れるはず」「償却済みだから価値はない」——どちらも判断を誤ります。売れるかどうかは製造年と動作で決まり、銘板の写真を複数の業者に送れば訪問前に概算が並びます。
入れ替えや閉店で機器を動かすときは、帳簿の処理と査定を同時に進めると、実質負担が数字で見えます。閉店時の全体像は閉店時の買取ガイド、業者ごとの対応品目と出張エリアは比較表で確認できます。
厨房機器の減価償却のよくある質問
厨房機器の減価償却は何年で計算しますか?
資産の区分で決まります。厨房設備を機械及び装置の「飲食店業用設備」として一式計上していれば8年、器具及び備品として1台ずつ計上していれば細目ごとの年数(電気冷蔵庫などは6年)です。固定資産台帳の区分欄で確認してください。
定額法と定率法はどちらを使うのですか?
個人事業主は、税務署に届出をしない場合は定額法です。法人は資産の種類ごとに法定の方法が定められており、届出で選定もできます。自社の適用方法は申告書と固定資産台帳で確認し、変更したい場合は事前に税理士か税務署に相談してください。
10万円未満で買った厨房機器はどう処理しますか?
減価償却をせず、全額をその年の必要経費にできます。使用可能期間が1年未満のものも同じ扱いです。10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年間で3分の1ずつ経費にする方法があります。
中古で買った厨房機器の減価償却はどうなりますか?
簡便法で耐用年数を短くできます。法定耐用年数の全部を経過した資産は法定の20パーセント、一部経過なら「法定から経過年数を引いた年数+経過年数の20パーセント」です(1年未満切捨て・2年未満は2年)。資本的支出が取得価額の50パーセントを超えると使えません。
償却が終わる前に機器を売ったらどうなりますか?
売却はできます。売却額と帳簿価額の差額が売却益・売却損になり、個人事業主の場合は原則として譲渡所得(総合課税)です。10万円未満や一括償却資産として経費化した機器の売却は事業所得または雑所得になります。
廃業するとき残った厨房機器の扱いはどうなりますか?
事業用資産でなくなった機器は、事業を廃止した時点で家事のために消費・使用したものとみなされ、消費税の課税事業者の場合は課税対象になり得ます(みなし譲渡)。廃業前に売却するか廃棄するかで処理が変わるため、廃業年の申告は税理士への相談をおすすめします。
この記事を書いた人
執筆・編集:厨房機器買取ナビ 編集部
飲食店の閉店・入れ替えで業務用の厨房機器を売るときの買取業者を、対応エリア・買取方法・得意な品目で比較しています。掲載している業者の情報は各社の公表情報、フロン排出抑制法など制度の内容は省庁の公表資料をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。
最終更新:2026年9月4日
