グリストラップから出る汚泥と油脂は、飲食店の事業活動にともなって生じる産業廃棄物です。家庭ごみにも事業系一般廃棄物にも出せません。許可を受けた業者に委託し、マニフェスト(産業廃棄物管理票)で処理の流れを記録に残す必要があります。
手順を外したときの重さは廃棄物処理法に表れています。無許可の業者に委託すると、委託した側が5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科の対象となり、法人には3億円以下の罰金が科されうる規定があります。
この記事では、グリストラップから出るものの区分、委託の手順、書類の保存期間、清掃費用の見方、そして閉店時の撤去で何が発生するかを整理します。
目次
グリストラップの汚泥は産業廃棄物になる
グリストラップとは、厨房の排水に含まれる油脂と食品くずを、下水道へ流す前に分離してためる装置です。ここにたまった汚泥と油脂は事業活動から生じた廃棄物であり、産業廃棄物として処理する義務が排出事業者である店側にあります。
和歌山県海南市は、飲食店のグリストラップの油脂や汚泥について「産業廃棄物」であり「家庭ごみや事業系一般廃棄物として廃棄できません」と案内しています。神戸市も、グリストラップから出る沈殿物は産業廃棄物であり、市のクリーンセンターでは捨てられないと回答しています。
| 誤解されやすい扱い | 実際 |
|---|---|
| 厨房から出るものだから生ごみと一緒に出す | 汚泥と油脂は産業廃棄物。事業系一般廃棄物の収集には出せない |
| 清掃業者に渡せば処理は終わり | 委託契約とマニフェストがなければ、排出事業者の責任は果たしたことにならない |
| 下水に流してしまえばよい | 下水排除基準を超える油分は流せない。除害の仕組みがグリストラップそのもの |
| 設備の点検と同じ扱いで記録は不要 | マニフェストの写しは5年間の保存義務がある |
参照:和歌山県海南市「飲食店などにあるグリストラップの油脂や汚泥について」/神戸市「グリストラップから出る沈殿物の区分」(いずれも2026年9月7日確認)
グリストラップから出る3種類のもの
グリストラップは通常3つの槽に分かれており、たまるものの性状が槽ごとに違います。清掃を依頼するときも撤去するときも、この3つを分けて考えると見積書の中身が読めるようになります。
| たまる場所 | たまるもの | 廃棄物としての扱い |
|---|---|---|
| 1槽目のバスケット | 野菜くず・食品くずなどの残さ | 自治体の案内が分かれる部分。所在地の窓口に確認する |
| 2槽目の水面 | 分離して浮いた油脂 | 産業廃棄物(廃油)として委託する |
| 3槽目の底 | 沈殿した汚泥 | 産業廃棄物(汚泥)として委託する |
バスケットの残さは自治体で案内が分かれる
解説記事の多くは「バスケットのごみは一般廃棄物、汚泥と油脂は産業廃棄物」と説明しています。ただし神戸市はグリストラップから出る沈殿物を産業廃棄物と回答しており、市の施設では受け入れないと明示しています。取り出したものが水分を含んだ泥状になっていれば汚泥として扱われる余地があるためです。
区分を自分で決めないでください。店舗の所在地の自治体窓口に、グリストラップの名称を出して確認するのが確実です。区分を誤ると、委託先の許可品目とも食い違います。
産業廃棄物は20種類に分かれている
東京都環境局は産業廃棄物を20種類に整理しており、汚泥には下水汚泥やビルピット汚泥などが、廃油には動植物油系廃油(なたね油・やし油・大豆油・豚脂・牛脂など)が例として挙げられています。委託先の許可証を見るとき、この品目に「汚泥」と「廃油」が入っているかが確認点になります。
参照:東京都環境局「産業廃棄物の具体例」(2026年9月7日確認)
産業廃棄物として委託する手順
処理の委託は、業者に電話して来てもらえば済むという流れではありません。契約と伝票が法律上の要件になっているためです。順番は許可の確認、書面契約、マニフェストの交付の3段階です。
| 手順 | やること | 落としやすい点 |
|---|---|---|
| ① 許可の確認 | 産業廃棄物処理業許可証で、都道府県知事等の許可と許可品目に汚泥・廃油が含まれるかを見る | 許可はあっても品目が違うことがある |
| ② 書面契約 | 収集運搬業者と処分業者のそれぞれと個別に書面で契約する(二者間契約) | 1社にまとめて任せた形の契約は要件を満たさない場合がある |
| ③ マニフェスト交付 | 廃棄物を引き渡すときに排出事業者が交付する | 業者任せにすると交付義務違反になりうる |
東京都環境局は、委託先が都道府県知事等の許可を受けていること、委託する産業廃棄物がその許可品目に含まれていることを収集運搬・処分の両方で確認するよう案内しています。契約内容に不備があると罰則の対象になりうるとも示されています。
清掃業者に定期清掃を頼んでいる場合でも、この3点は排出事業者である店側の確認事項です。業者から契約書の写しと許可証の写しを受け取り、店に置いておいてください。
参照:東京都環境局「処理を委託する場合」(2026年9月7日確認)
産業廃棄物のマニフェストは5年保存
マニフェストは交付して終わりではありません。処理が終わった証明として戻ってくる票を、決められた期間だけ手元に残す義務があります。ここを落とすと、適正に処理したことを証明できなくなります。
| 書類 | いつ手元に来るか | 保存期間 |
|---|---|---|
| A票(排出事業者保管) | 交付時 | 5年間 |
| B2票(運搬終了)・D票(処分終了)・E票(最終処分終了) | 運搬または処分を終了した日から10日以内に送付される | 5年間 |
| 処理委託契約書と添付書面 | 契約時 | 契約の終了後5年間 |
加えて、多量に排出する事業者などは産業廃棄物管理票交付等状況報告書を毎年6月30日までに都道府県知事等へ提出することとされています。電子マニフェストを使う場合、マニフェストそのものの保存は不要です。
フロン法の3年と混同しない
閉店の実務では、廃棄物処理法とフロン排出抑制法の書類が同時に出てきます。保存期間が違うため、まとめて同じ年数で管理すると足りなくなります。
| 書類 | 根拠 | 保存期間 |
|---|---|---|
| マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写し | 廃棄物処理法 | 5年間 |
| 産業廃棄物処理委託契約書 | 廃棄物処理法 | 契約終了後5年間 |
| フロン類の回収依頼書・委託確認書の写しと引取証明書 | フロン排出抑制法 | 3年間 |
フロン側の手続きは業務用冷蔵庫の処分にまとめています。閉店で両方が発生する場合は、書類の保管場所を1か所に決めてから作業を始めてください。
参照:東京都環境局「マニフェストの交付」(2026年9月7日確認)/環境省「フロン排出抑制法ポータルサイト」
グリストラップ清掃の費用の見方
清掃の見積書は一式で書かれることが多く、そのままでは他社と比べられません。実際には作業と廃棄物処理という性格の違う費用が合わさっているため、分けて出してもらうと比較できるようになります。
| 費目 | 内容 | 金額が変わる要因 |
|---|---|---|
| 清掃作業費 | 槽内の残さ・油脂・汚泥の引き上げ、槽の洗浄 | 槽の容量、たまっている量、作業時間帯(営業時間外か) |
| 収集運搬費 | 汚泥・廃油を許可車両で処理施設へ運ぶ | 量、店舗から処理施設までの距離、搬出経路 |
| 処分費 | 処理施設での脱水・処理 | 重量、性状(含水率) |
当サイトが金額の一覧を載せていないのは、これらが槽の容量・たまり具合・地域で大きく変わり、平均値が判断を誤らせるためです。複数社から同じ条件で見積もりを取り、3費目に分けて並べるのが確実な比べ方になります。
見積もりを依頼するときは、槽の寸法(幅・奥行・深さ)、槽の数、前回の清掃時期、店舗の営業時間を伝えてください。この4点があると、現地調査の前でも精度の高い概算が返ってきます。
放置するとコストは清掃費だけでは済まなくなる
汚泥がたまり続けると、悪臭・排水の逆流・配管の詰まりにつながります。詰まりが起きれば配管洗浄や部分改修の費用が別に発生し、営業を止める時間も生じます。定期清掃の費用は、詰まりの復旧費用と比べて判断するものです。
グリストラップの清掃頻度と法令の基準
清掃の頻度に一律の決まりがあるわけではありません。建物の規模によって法令が適用される場合と、自治体の指導基準にとどまる場合に分かれます。自店がどちらに当たるかで、求められる水準が変わります。
| 区分 | 基準 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 建築物衛生法の特定建築物にある店舗 | 排水に関する設備の清掃は6か月以内ごとに1回 | 法令の基準 |
| 東京都(排水槽) | 4か月以内ごとに1回以上 | 都の指導基準 |
| 東京都(グリース阻集器) | 使用日ごとに網かご内の捕集物と油脂類を除去し、少なくとも7日ごとに1回清掃 | 都の指導基準 |
特定建築物に当たらない小規模な店舗でも、排水そのものには基準があります。大阪市は下水へ放流する場合のノルマルヘキサン抽出物質含有量について、1日平均排水量1,000立方メートル未満で鉱油類5ミリグラム毎リットル・動植物油類30ミリグラム毎リットルという基準を公表しています。数値は排水量の区分と自治体の条例で変わります。
実務上の目安は、日常の捕集物除去は毎日、汚泥の引き上げをともなう清掃は業者に定期で入ってもらうという組み立てです。日常清掃で出た油脂と残さの扱いも、産業廃棄物として委託する分と分けて記録しておくと、後の説明が楽になります。
参照:東京都健康安全研究センター「Q&A 4 排水管理」/大阪市「下水道へ排水を放流する場合の基準」(いずれも2026年9月7日確認)
閉店時のグリストラップ撤去で出るもの
閉店や業態変更で店を明け渡すとき、グリストラップをどうするかは原状回復の範囲の問題になります。撤去するかどうかを自分で決める前に、賃貸借契約と貸主の意向を確認する必要があります。
| 段階 | やること | 出るもの |
|---|---|---|
| ① 契約の確認 | 原状回復の範囲にグリストラップが含まれるかを契約書と貸主に確認する | — |
| ② 汚泥の抜き取り | 撤去の前に槽内を空にして清掃する | 汚泥・廃油(産業廃棄物) |
| ③ 撤去工事 | 床埋込型は斫り工事、据置型は取り外しと搬出 | コンクリート殻・金属くず・廃プラスチック類 |
| ④ 復旧 | 床の埋め戻しと仕上げ、配管の処理 | 工事にともなう廃材 |
順番として外せないのが②です。汚泥が入ったまま撤去すると、産業廃棄物としての処理ルートに乗せられず、工事が止まります。清掃業者と解体業者が別なら、日程を先につないでおいてください。
費用の観点では、撤去が原状回復の見積もりに含まれているかを確認することが要点です。工事一式に紛れ込むと、汚泥処理の費用が二重に計上されていても気づけません。原状回復の範囲の考え方は店舗の原状回復費用、閉店の段取りは閉店でやることの時系列にまとめています。
撤去そのものが不要なケースもあります。次のテナントが同じく飲食店であれば、設備として残したほうが造作譲渡の材料になります。撤去を決める前に、居抜きで引き継げないかを先に確認してください。
産業廃棄物の委託を誤ったときの罰則
廃棄物処理法の罰則は、処理を実行した業者だけでなく委託した側にも及びます。排出事業者責任という考え方があり、店側が「業者に任せていた」と説明しても免れる構造にはなっていません。
| 違反 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 不法投棄 | 5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科 | 3億円以下の罰金 |
| 無許可業者への委託(委託基準違反) | 5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科 | 3億円以下の罰金 |
| マニフェストの交付義務違反・虚偽記載など | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | — |
条文の表現は2025年6月1日施行の改正刑法により「懲役」から「拘禁刑」へ改められています。東京都環境局の解説ページは改正前の表記のままの箇所があります。
金額の大きさより実務で効くのは、確認を怠った側が問われるという点です。許可証の品目を見る、契約書を2通そろえる、マニフェストの写しを5年保管する——この3つで、通常の運用は要件を満たせます。
参照:東京都環境局「廃棄物の不適正処理禁止」(2026年9月7日確認)
グリストラップと厨房機器はまとめて相談する
閉店のときは、売れる機器の買取と、売れないものの産業廃棄物処理と、冷媒フロンの回収が同時に発生します。窓口を分けるほど日程が合わなくなり、待ち時間のぶんだけ賃料が積み上がります。
| 出るもの | 行き先 | 必要な許可・登録 |
|---|---|---|
| 動く厨房機器・什器 | 買取 | 古物商許可 |
| グリストラップの汚泥・廃油 | 産業廃棄物として委託 | 産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可 |
| 値のつかない金属・什器 | 産業廃棄物として委託 | 産業廃棄物収集運搬業の許可 |
| 冷凍冷蔵機器・業務用エアコン | フロン類の回収後に廃棄 | 第一種フロン類充塡回収業者の登録 |
グリストラップの清掃と汚泥処理は、専門の清掃業者や産業廃棄物処理業者の領域です。買取業者がそのまま扱えるわけではありません。ただし産業廃棄物収集運搬業の許可を公表している買取業者であれば、値のつかない機器の処分まで一緒に相談できます。掲載10社では得値厨房・厨房買取プロ・LIFE MARK'Sの3社が公表しています(2026年9月4日に各社の公式サイトで確認した範囲)。
段取りとしては、買取査定を先に取り、搬出が終わってからグリストラップの清掃と撤去に入るのが無駄のない順番です。機器が残ったままだと清掃業者も解体業者も動きにくくなります。機器側の手続きは厨房機器の処分方法、費用の全体像は閉店費用の内訳、業者の比較は比較表で確認できます。閉店の届出は廃業手続きの一覧にまとめました。
グリストラップと産業廃棄物のよくある質問
グリストラップの汚泥を自分で捨ててもいいですか?
できません。汚泥と油脂は事業活動から生じた産業廃棄物にあたり、家庭ごみにも事業系一般廃棄物にも出せません。許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託し、マニフェストで記録を残す必要があります。
清掃業者に頼めばマニフェストは不要ですか?
不要にはなりません。マニフェストを交付するのは排出事業者である店側です。清掃と運搬・処分を同じ業者に頼む場合でも、許可の内容を確認したうえで書面契約を結び、戻ってきた票を5年間保存してください。
バスケットにたまった野菜くずはどう扱いますか?
自治体によって案内が分かれる部分です。一般廃棄物として扱う説明が多い一方、神戸市はグリストラップから出る沈殿物を産業廃棄物と回答しています。水を切った状態でも泥状であれば汚泥に近づくため、所在地の自治体窓口に確認するのが確実です。
清掃はどのくらいの頻度で必要ですか?
建築物衛生法の特定建築物にある店舗では、排水に関する設備の清掃が6か月以内ごとに1回とされています。東京都は排水槽について4か月以内ごとに1回以上を指導し、グリース阻集器は使用日ごとの捕集物除去と7日ごとに1回の清掃を求めています。小規模な店舗でも、詰まりと悪臭を防ぐには定期清掃が現実的です。
閉店するときグリストラップは撤去しなければいけませんか?
賃貸借契約の原状回復の範囲によります。契約書を確認し、貸主または管理会社に意向を確認してください。次のテナントが飲食店であれば、設備として残して造作譲渡の材料にできる場合があります。
マニフェストの保存期間はフロンの書類と同じですか?
違います。マニフェストの写しと処理委託契約書は5年間、フロン排出抑制法の回収依頼書・委託確認書の写しと引取証明書は3年間です。閉店時は両方が同時に発生するため、保管場所を1か所に決めておくと管理しやすくなります。
この記事を書いた人
執筆・編集:厨房機器買取ナビ 編集部
飲食店の閉店・入れ替えで業務用の厨房機器を売るときの買取業者を、対応エリア・買取方法・得意な品目で比較しています。掲載している業者の情報は各社の公表情報、フロン排出抑制法など制度の内容は省庁の公表資料をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。
最終更新:2026年9月4日
